読み物|The making of "The Time Spinning Witch"

零夜クラスタ第3弾『時還の魔女』では、謎の存在であった零夜の目的と、この世界がかつてラピスとミリアム達の戦いがあってから約10000年前の過去世界であることが明かされます。そして、あらゆるものを未来から吸収し続ける、真の敵である時還の魔女の正体もストーリーにおいて見えて来ることになります。
FoWTCGにおいて、ストーリーとカードには密接な関係があります。今日はストーリーをどのようにデザインに落とし込んでいるかを少し紹介していきたいと思います。

零夜クラスタは始まりから全く新しい世界に見えながら、グリムや赤ずきんといったラピスクラスタ以前からの登場人物も現れていました。これらは謎に包まれていましたが、『時還の魔女』ではその謎が徐々に氷解していき、それに絡む物語が急速に展開していきます。

では、その中心となるルーラー、アミル、シェヘラザード、スカーレッドの3人とスターターに収録されている、ギル・アルハマートとそれに伴うカード達を見ていきましょう。

儚き希望の姫 / 絶望姫 アミル

アミルはグリムの妹のルミアであり、遥か未来で時還の魔女に吸収された際に、その名前を反転させてしまいました。名は体を表すというように、希望を絶望に反転させるイメージは名前や性格、性質そして能力にまで影響を及ぼしています。
彼女はササル王宮を崩壊させた張本人であり、その跡にライトキャッスル(転化後にはダークキャッスルと呼ばれる城)を召喚し、彼女は零夜達の帰りを待っています。

ゲーム内で彼女が司る能力は『転化』です。『転化』は表面と裏面にカードが印刷されており、表面が希望を、裏面が絶望を現しています。
かつての両面カードの能力『時変』は表裏で時間の流れを現していましたが、今回の『転化』は性質の変化を示しています。光から闇へと変わりゆく様は、彼女が望む絶望の世界を自身のジャッジメントと共に演出していくという意志の現れなのです。

その影響はリゾネイターだけでなく、詠唱にも存在しています。例えば、彼女の持つ希望と絶望の剣は大きな武器となり、それを合わせた運命を操る剣は敵にとっては大きな脅威となることでしょう。

リゾネイターやアディションの『転化』は一部を除き、ジャッジメントがトリガーとなっています。そして、彼女は不滅を持ち、転化に関連した効果を持つため、繰り返しのジャッジメントに適しているのです。終わらない悪夢のようなループが彼女の持つ最大の力となってくれるでしょう。

ただ、それに抗うものも存在します。ルミアを助けるために零夜と共に未来から来た、グリムや赤ずきんです。彼らはすでに零夜クラスタの始めから、この世界へと訪れていました。ここへ訪れるために、零夜の闇の力を借りていましたが、今度は闇から光へと、未来を取り戻すために彼らが持つ本来の希望溢れる姿へと転化します。


同じ『転化』であっても、奥義カウンターを用いるため、彼らのルーラーは御影零夜がスタンダードなものになるでしょう。希望が絶望を塗り替えられるかは、彼らに掛かっているのです。


黄昏の少女 / 紅の獣 スカーレッド

スカーレッドは凶悪な破壊者です。彼女は最強の力を持ちますが、これには制約があります。それはすべての思考を放棄し、破壊に集中することで、彼女は真の力を発揮するという制約です。『虚空』の能力は手札が0枚の時に発揮される能力で、その殆どは効果を大きくブーストします。"考えずに"衝動に任せることが彼女の真の力を見る唯一の方法なのです。

この"手札を0枚にする"ことは彼女にとって簡単なことです。手札を捨てダメージを与える能力がそれをサポートしてくれます。なぜ恐竜だと効果が増すのかというのは、彼女が恐竜を配下として使っているためです。彼女はそれを投げ飛ばす力を持ち、そして、恐竜が当たったらとても痛いというのは、もちろん想像でしかありませんが、分かりますよね。

ただ、手札を持たないというのは大きなデメリットです。相手にとっては、あなたの行動を完全に把握できてしまいます。しかし、スカーレッドはそれを意に介しません。ジャッジメント後の姿が物語るように暴力こそがすべてを解決するということなのです。

彼女の特性は詠唱にも影響し、その力もまた、思考を放棄した時に発揮されます。

この手札という思考要素を放棄していくこと、それは、彼女が戦えば戦うほどに理性を失っていく様を表しています。

しかし、実はスカーレッドは苦しんでいます。遥か未来で、偽の赤ずきんとして吸収された彼女は自身を失うことを望んではいません。ゆえに、偽りの名であるスカーレッドを名乗り、本当の自分をギリギリの所で守っているのです。彼女を救う方法が死でしかないと自身でも分かっていても。


永遠夜の語り手 / 滅びの夜のシェヘラザード

シェヘラザードもまた、10000年の未来において、時還の魔女に吸収されています。零夜とも面識のある彼女は、時還の力の発露を感じ、それを止めるために動きましたが敗れてしまったのです。

彼女の能力は物語と現実の境界を崩し、具現化したり、抽象化したりできることです。そして、彼女は膨大な物語が書かれた本を所持しています。それは『グリモア』という能力として機能します。
エキストラデッキというのはまさに彼女の持つ物語の力であり、ゲーム内で彼女はいつでもその空間から物語を取り出し、それの語り部となれます。

しかし、彼女の持つ物語は時還の魔女の支配により変容し、バッド・エンドやそれを暗示するような物語へと変わってしまいました。暗示された物語はそうなったということではありませんが、物語を具現化させられるシェヘラザードはその暗示を現実のものと出来る力を持つのです。


そして、彼女は助手として性悪な人形達を連れています。特にイヴとエヴァの2人は口も悪く性格も最悪です。フレーバーが示すように、他人の不幸を楽しみに生きているのです。ただし、助手としての優秀さは間違いないありません。シェヘラザードを使い、物語を語る上で、彼らは欠かせないものとなるでしょう。

ストーリーでは零夜は気づいていましたが、実はシェヘラザードは自身が吸収されることも予見していました。では何故吸収されたのか?"何かを届けるため"にこの世界へ訪れたと考えられるかもしれません。ただそれは、シェヘラザードを倒さないかぎりは分からないことなのです。


正史の王 ギル・アルハマート

アルハマート。その名前はラピスクラスタで現れた古代の王なのは記憶に新しいでしょう。

彼は時還の力を深く理解しています(それが制御できないことも)。ある過去世界では時還の魔女の吸収の手から逃れ、この過去世界のギルの体を乗っ取り反撃しようと狙っています。
何故、ギルの体なのか?というのは、ギル自身がアルハマートの過去の姿だからです。ここは作られた過去世界ではありますが、零夜の干渉などでその歴史は大きく変わっています。ギルは本来アルハマートとなり世界を滅ぼすはず、だったのです。彼がどのようにしてアルハマートとなったのか。また、ラピスとの関係もストーリーで明かされることとなります。

今回のスターターは正史、つまり、本来の歴史で起こったことを示し、その時のギルの配下達が現れています。七曜の魔導師といえば全員が出そろう前にやられてしまったことで有名かもしれませんが、ここでついに出番がやってきます。
これらはアルハマートが記憶から呼び出したもので、ギルはアルハマートと己自身の精神世界で戦うことになります。スターターでは本来のあった歴史が垣間見えると考えて貰うといいでしょう。シルヴィアやブレイザーといった、後にラピスの配下となる名前もここで登場します。

彼らは正史という特徴が与えられています。これらはアルハマートの記憶からの特別な召喚であり、ギルの精神世界のみでの存在です。ゆえに、正史のカードのシナジーはここでのみ発揮され、今後追加されることは基本的にはありません。同じ存在の人がこの世界に居たとしても、違う人生を送っていることでしょう。探してみればこのセットでも見つかるかもしれません。

このデッキで正史ではアルハマートとなったギルの敵はパールシュタイン、キリク、シーラといった英雄だったのが見てとれます。これらもまた、今度のストーリーで明かされていくことになるでしょう。

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新たな力を得た2人のヒーロー

こうした新たな脅威に対して、キリクとシーラも黙ってはいません。魔王に敗れた彼らは自らの力不足を感じ、禁忌の場所へと赴き、守護者を倒しその力を得ます。新しい力を得た彼らは再び、戦場へと赴くのです。

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守護者を倒したことで、キリクはドラゴンの大いなる力を発揮できる竜神の血を、シーラは雷雨の力を与える雷の傘を得ました。

スターターセットの5人の英雄は新しい力を得て、再び集結し、戦いはフィナーレへと向けて進んでいきます。いろいろな思惑が絡み合うこの世界がどのように進んでいくか、それは、次のセットで明らかになってくるでしょう。