革命前夜|第5話 “十五夜”

日は完全に暮れた。星と赤い月の明かりのみが辺りを照らしている。

『あれか? どう思う?』

先に見える夜城を見て、ギルが話す。

『誰か答えてくれてもいいじゃねーか』

『あの黒い瘴気。見たまんまだろう。言わなくてもわかる。本物だ』

『一応、聞いただけだろうが』

『まあまあ〜』

ギルとパールシュタインの喧嘩を、シーラが仲裁する。

ここに集まったのはお互いを良く知らない4人組だった。それぞれが最初から一緒だった訳ではない、旅の途中で4人が一緒に行動することになり、ここまで来たのだ。まるで、何かに引き寄せられるように。

『やっぱり、試されてるのかもしれねーな』

ギルが思ったことを口にする。

『何のために?』

『それを知りにここまで来たんだろうが』

『口の聞き方を教えてやろうか、小僧』

『やめろ。行くぞ』

今度はキリクが仲裁に入る。夜城はひどく不気味なオーラを放っていた。、まあ、それでも、行くしかねーけどな。ギルは扉を開ける。

『さてと、お出迎えはあるか』

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不気味なオーラは中に入るとさらに濃度を増す。その先を見ると、綺麗な少女が立っていた。間違いない、アレが夜城の主だ。美人だが優しさとは無縁、キツそうな性格、それが第一印象だった。それに……どこかで見たようなデジャヴに襲われる。しかし、記憶のどこにも彼女の存在は無かった。気のせいか?

『よし、ここは俺に任せろ』

『囚われているものが、居るかもしれない、あまり刺激するなよ』

『分かってるって』

ギルが一歩前に出ると、少女へ話掛ける。

『さて、率直に教えてもらう。お前は何者だ? 言わなければ痛い目に合うぞ』

『おい!』

パールシュタインは何か言いたげだったが、ギルはそれを“しっ”というジェスチャーで制した。少女はその言葉を聞いても雰囲気は少しも変わらない。ギルは今までにない、異質なプレッシャーに襲われる。この世界のものとは、思えない感覚。

『簡単には教えられないわ。そうね、まず、あなた達の力、見せて貰いましょうか』

少女は答える。やはり試されているのだろう。ならば、

『望むところだ。パールシュタイン、戦ってこい』

ギルがパールシュタインにこんどは“行け”のジェスチャーで指示を出す。それを見た、パールシュタインは白黒の顔を真っ赤にしていた。

『ふざけるな、ギル、お前がいけ。けしかけたのはお前だろう』

『うるせーな、パンダの癖に』

『なんだと!』

『ああ、また始まった。キリク、どうしましょう〜』

『放っておけ、シーラ』

ギルとパールシュタインの睨み合う中、夜城の主である少女はお構いなしに、こちらへと向かってきていた。目的は俺か、レディからアタックを仕掛けられるのは光栄な事だが、ありがたいとは言えない。

『パンダ、休戦!』

『パンダはやめろ、パールシュタインだ』

少女はその眷属と共に襲いかかって来ていた。精鋭が何人かと言ったところか。

『俺がアレをやる。他の奴らは任せた』

『仕方ない』

『まあ、いいですけども〜』

ギルと相対した少女は言う。

『始めに行っておくわ、殺す気で来なさい』

『言われなくとも』

敵対するものの命を奪うのを躊躇しない、それは、ある出来事があってから、ギルの信念となっていた。会話の最中、闇の魔法が辺りを覆い、それは形を成してギルの周りをひらひらと飛んでいる。いつの間にか仕掛けられていたのだろう。油断も隙もないとはこの事だが、攻撃的な呪文ではないようだ。

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『蝶か?』

ひらひらと飛んでいたもの、それは蝶だった。しかし、それらが一斉に羽ばたくと、蝶から拡散した闇によってギルの視界は一気に遮られる。

『見えねぇ!』

そして、死角からの打撃がギルを襲った。その衝撃でギルは大きく飛ばされる。あらかじめ、仕込んでおいた防御魔法によって、ダメージは最小限に抑えられたが、その力は驚異的といってよかった。一撃が重すぎる、何かが“乗っかって”やがるな。

『ちっ、化け物め』

『言うことはそれだけかしら』

少女は攻撃の手を休めるつもりはないらしい、ならば

『こちらからも行くぜ!』

ギルは葉っぱのような緑の生命体を召喚する。リーフファイター。それらは少女にまとわりつくようにチョロチョロするが、1体1体の戦闘力は大したことはない、バッタバッタと倒されていった。というよりも、自ら倒れているようにも見えた。

『これは、何の真似かしら?』

『さて、それはどうだろうね』

『本気にならないと死ぬわよ。あなた』

少女は再び、蝶を放つ。いや、放とうとした。それは風によって、吹かれるように消えていった。

『俺のオリジナルの魔法だ。滞留したエレメントを触媒にすれば、魔力の詠唱は必要ない。触媒となるエレメントを滞留させるっていう下準備が必要だけどな』

『とりあえず一発返させて貰う、死んだらごめんな!』

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ギルは拳に風を纏い、少女へと渾身の一撃を突き刺す。心臓を貫く、完全なる致命傷だった。

『さて』

周りを見渡すと戦いは終わっていた。眷属達も他の奴らがやっつけたらしい。あいつら、ちゃんと強かったんだな。ギルがそう思った、その時。

『あなた達、合格よ』

少女が目を見開いて喋り始める。まさか、生きている? そんなはずはない……致命傷だった。なら、“死んで“から蘇った? それに、腰に差したまま、抜かれていない剣。

『合格も何も、お前、剣も抜いてねーだろ。それでも、だいぶ苦戦したけどな、そもそも、殺したはずなのに死んでねーって、一体何を企んでいる?』

『気にしないで、死ににくい体質なの。それよりも、その力、大切にしなさい』

『全然、分かんねーよって、待て! 名前くらい教えてくれ!』

『御影零夜』

零夜は微笑みながら言うと、黒いコウモリの群勢へと姿を変え、空へと消えていった。

『零夜、待て!』

『一体、何だったんだ?』

パールシュタインがギルへと聞く。

『分からねぇ、ただ、また会うかもしれないな』

ギルはそう予感していた。確実にまた、会うことになるだろうと。

“革命前夜”第6話へ続く。

物語|革命前夜

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