ギルの物語|第1話 “夢”

水平に雲がかった山が見えた、上空にいるのだろう、風が強く吹いていた。下を覗けば地上が広く見渡せる。意識はハッキリしてたが、体は自由に動かせない。これは夢だろうか。夢は過去の体験や願望によって形作られるというが、これは記憶にも無ければ、望んだこともない景色だった。

地上には自分に敵意を持った人々が見えた。これから、行われるのは彼らとの戦いだろう。もしかしたら、誰かが辿った歴史の追体験かもしれない。ならば、誰かがこの夢を自分に見せているのだろうか……しかし、何の為に?


そう思ったとき、声が聞こえた。

『起きてください、ギル。ギル!』

650e1ae3-e6aa-4698-86c7-8e6210f69fa3.jpg

現実への帰還。いつもの憂鬱な夢で無いのは助かった、寝起きは悪くはない。そして、こいつはエルフの王子のセシル。口うるさい友人だ。

『ギル。顔に出てますよ、口うるさいって、余計なお世話です』

『ああ、そうか、何のようだ、セシル』

『もう、起こしてくれって言ったのはギル、あなたですよ』

『そうだったか? 覚えがない』

『ええ、あなたは都合の悪いことを一瞬で忘れる癖がある』

『前向きと言ってほしいな』

『前だけを向く人に、誰も付いて来ませんよ』

『ああ、思い出した』

『思い出してくれましたか』

『いや、起きなければならなかった用事を思い出した』

『まったく……』

ギルとセシルは人間とエルフ、生まれも育ちも異なるが、2人はある事をきっかけに友人関係を築いていた。
エルフと対立しているダークエルフとの諍いの際、通りかかったギルがダークエルフと交渉し諍いを治めたのだった。その時、セシルはティアという幼い妹と一緒に居た。妹を傷つけたくなかったセシルにとって戦いを避けられたのはありがたかった。その一件で、セシルはギルに恩を感じていたのだ。そして、話すうちに、ギルに不思議な魅力を感じたのも、友人関係が続いている理由の一つだった。

『さて、行くか。用事っていうのはお出かけだ、パンダの国へな』

『ササルですか、そこに何があると言うんです?』

『酒場だ。酒場には情報が集まる』

『何か知りたい情報があるということですね?』

『夜城の噂だ。セシルも聞いたことがあるだろ?』

『ええ、話だけなら。しかし、あそこには元々、何も無かったはず。ただの噂に過ぎないと思いますが』

『それなら、噂が起こること自体がおかしいと思わないか? 真偽はともかく、行って見ろってことさ、セシルは付いてこなくていいぜ、1人旅の気分だからな』

『もともと、付いていきませんよ。あまりあなたと遊んでいると父上に怒られますからね』

この世界はエルフの住む森(厳密にはエルフはポータルと呼ばれる扉の先の幻想世界に居住している)、エルフと対立し幻想世界から追い出されたダークエルフが住む世界外れにある森、パンダが交易を行う宝石の国、竜人が住む山、人魚が海底に国を構える海があった。その中で、ギルが向かうのは交易の盛んなパンダの国、ササルだった。この大陸の中央に位置し、物資の交換が盛んに行われている。国王のパールシュタインは宝石を好み、物資の交換も宝石を使って行われていた。

19eea220-9753-484e-87f0-7660df4e62e1.jpg

そこの酒場へと到着したギルが得た情報はこうだった。
夜城はダークエルフが住む森を抜けた先に夜の間だけ城が出現するらしい。そこへ行ったものは誰も帰って来ていない。噂はどこからか流れて来ており、発生源は分からない。そこへ行くにはダークエルフの居住地を通らないと行けないため危険だということだ。帰って来ないものは、ダークエルフに囚われている可能性もあるというのが噂の趣旨だった。

『結局は行ってみるしかねーようだな』

感覚で何かを察知する天性の能力をギルは持っていた。この噂には何かある。彼の感性がそう告げていた。

外の広場を見れば、パンダの軍団が見えた。彼らも夜城の噂の真相を見つけに出かけるのかもしれない。一際、大きなパンダが宝石をジャラジャラと鳴らしながら指示を出している。あれが、パンダの王様パールシュタインか。確かに偉そうだ。

69cc6ede-8399-4736-9b6b-f9baa5878509.jpg

『地味な白黒の癖に趣味は派手だな』

聞こえるはずも無い距離だが、パールシュタインがこちらを振り向く。

『おいおい、地獄耳、いや、パンダ耳か、先を越される前にさっさと出た方が良さそうだな』


ギルは酒場を出ると、ダークエルフの森へと向かうのだった。

“ギルの物語”第2話へ続く。

ギルの物語

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー