ギルの物語|第11話 “魔王降臨”

ギルが辿り着いたときに魔界門は既に開かれていた。

その奥からは奇怪な魔物達が現れ初めている。その魔物達の体には奇妙な紋章が浮かんでいた。

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『ギル、一つ、聞いていいか?』

追いついたパールシュタインがギルへと問いかける。それは、魔物達の奥に控える、魔術師の存在についてだった。見た目は若く見えるが、まるで老練な魔術師のように深く大きな魔力が感じられる、あの魔界門か生み出される生物の使役を1人で行っているのだろう。

『あれは何者だ? お前は知的好奇心が強い、知っていてもおかしくない』

『魔王』

『魔王? おとぎ話か? そんなもの“物語“上の存在だろう』

『魔王とは、得体の知らない軍勢を率いるもの、と考えれば、あれは魔王そのものだからな』

得体の知れない軍勢といっても、あいつからは禍々しいオーラは感じなかったがな、と、ギルは零夜を思い出す。今、果たして彼女は何をしているのだろうか?

『考えている暇はない。先手必勝だ。俺が仕掛ける、隙が出来たところをお前らがやれ』

『私も、行きますよっと』

キリクと、そして、いつになく真面目そうにシーラが同意する。未知の存在に対して、有効な手段は2つ。それが力を発揮する前に叩くか、一旦引き、力を見定めるか。だが、確かに力を見定めている暇は無い、脅威を生み出し続けている魔界門は放置しては置けないのは明らかだった。

『頼む』

ギルの風の魔法に乗って、キリクが左にシーラが右に素早く散る。狙いは挟み撃ちの形となる炎と水の連携攻撃。それぞれ系統の異なる魔法を完全に防御するのは難しい、打ち破ることは出来なくとも、隙が出来さえすれば……俺の攻撃で、あいつを殺し、魔界門を閉じる。フレイラがそれで助かるかは分からないが、選択肢はない。

『パールシュタイン、援護を頼む』

『うむ』

決めたとなれば、動きは素早い。キリクとシーラに続いて、ギルとパールシュタインも動く、キリクとシーラが左と右ならば、ギルとパールシュタインは上下で攻める。パールシュタインが宝石の力で、地上へと気を引き、ギルが空から強襲する、上下左右からの連携攻撃だった。

キリクとシーラがまず、炎の闘技と水の波に乗って魔王へと襲いかかる。モンスターによって抱えられた椅子に座ったまま、動く様子はない。ただ、眼が2つの存在を確認し、片腕だけが上へと動いた。

『竜人にマーメイド、本来の相手とは異なるな。イレギュラーな分子が干渉した結果か?』

魔王の周りに紋章が浮かぶ。5つの色をした紋章はそれぞれ、5属性の魔法の力を宿しているようだった。魔王が腕を振り下ろすと、くるくると紋章が回る。そして、炎の波の前には水の紋章が、水の波の前には炎の紋章がそれぞれ停止した。

『さりとて、大差はあるまい。さて、教えてやろう、連携は個々の力が敵を倒しうるレベルに備わって初めて効果を発揮する。致命傷に至らぬ攻撃の連携に意味はない』

キリクとシーラの攻撃が魔王に届く前に紋章から生み出された障壁によって、その体ごと弾き飛ばされる。

『ちっ、この程度で』

『はい、まだですよ!』

キリクとシーラが体勢を立て直すと、再び魔王へと向かう。しかし、魔王はたかる虫を見るような眼で2人を見ていた。

『身の程を知れ』

魔王へと向かっていた、キリクとシーラの動きが突然止まった。魔界門からの小さな弓矢が2人を射抜いていたのだ。魔界門に吸い込まれ、見るも無残な姿となった、ダークエルフ達の集団、そして、その中には、ヒルダにサフィーナ、それに……フレイラの姿もあった。

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『てめぇ!』

キリクとシーラが崩れ落ちる、魔王の魔法の反射によるダメージと弓矢の毒によるものだ。命を奪われるには至ってはいないが、長く持つ保証は無い。

『パールシュタイン。予定変更だ、一撃入れて離脱する』

『了解だ』

パールシュタインが宝石の輝きを纏い突撃する。しかし、魔王の闇の紋章から広がる闇が宝石の輝きを封じ込める。そして、そのまま、闇の重力を使って、上空のギルの動きを縛ろうとする。

『ちっ、だが、届かせる』

ギルは縛られる寸前、エレメントを生み出すとそれを身代りに闇の束縛から逃れる、そして、そのまま、エレメントを触媒として、風の刃を作り出した。そして、それをそのまま、魔王へと投げ付ける。

『さすがは“正史”の王だ』

『意味分からねえこと、言ってんじゃねぇ』

『だが、余りにも不完全だ』

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今度は魔王の前に風の紋章が現れ、魔力の光を放つ。同系統の魔法ならば、魔力の強い方が勝利するだろう。そして、ギルの全力の魔法は、魔王へと届く前に霧散した。

『芽は潰しておこう。さらばだ』

魔王の5属性の紋章が全て集結する。その魔力の塊はギルへと向かって放たれようとしていた。

しかし、ギルの前にひらひらと黒い蝶が舞う。その刹那、蝶の中から零夜が現れ、魔王へとその手に持つ十六夜月下で斬りつける、魔王はギルへの攻撃を中断し、防御へと回った。

『随分と若返ったわねウェルザー、見違えたわ』

『そうだったな。この世界に干渉出来るものなど、お前だけだろう。あれから、随分と“時が経った”。若返りもする』

『ギル、私が時間を稼ぐから一旦引きなさい』

『助かる。パールシュタイン動けるか?』

『ああ、問題ない。キリクとシーラなら、もう確保してあるぞ』

『よし、動けるパンダだ』

『お前は一言多いぞ』

『零夜。任せていいのか?』

『人間如きに侮られるのは好きじゃないわ』

『分かった』

そして、撤退するギルに魔王が話掛ける。

『正史の王よ。我が名はウェルザー、覚えておくがいい』

『俺の名は“ギル”だ。覚えなくてもいいぜ、いずれ、お前は俺が殺すからな』

キリクとシーラを連れ、ギル達は一旦、ササルへと撤退したのだった。

“ギルの物語”第12話へ続く。

ギルの物語

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