ギルの物語|第13話 “空島と不思議な兎人”

『待て待てーい! 私に案内させーい!』

ギルがこれからの事を考えながら、ササルへ帰る途中、どこからか、謎の声がした。しかし、周りには誰もいない。

『気のせいか?』

『考えごとをしていて上の空みたいだけど、私が居るのは上の空、なんちゃってってね!』

空耳ではなさそうだが、ロクな奴ではないのはすぐに分かる。ギルは上を見るまでもなく、ひらりと身を躱す。ギルが居た場所には、奇妙な耳をした少女が落ちていた。というより、上から降ってきたというのが正しいだろう。

『コラッ! 受け止めるのが王道でしょ! 物語の王道を無視しないの』

『じゃあな』

『あっ! 待って待って。これも、何かの縁。あなた、一期一会っていう言葉って知ってる? 話すと長いんだけ……』

こういう輩は無視に限る。ギルは速度を上げて、ササルへと帰還した。

『何故、ついてくる?』

『ぜーはーぜーはー、いや、だから、一期一会って言ったじゃない。私に会ったのだって、千載一遇のチャンスかもしれないよ、だから、連れてって、ってさ!』

こいつの行動は意味が分からないが、ギルはここへ来るまで決して速度を緩めていない、意志はともかく、付いてこられるとは……見掛けや口調の通り、怪しいのは間違いないが、只者ではなさそうだ。

『それに分かってるって、空の先へ行くんでしょ! 私に任せて、案内なら出来るし、戦力にもなるってね、旅は道連れ世は情けっていうし! 信じるものは救われるってね』

『この世界じゃ、信じるものが掬われるのは足だがな。まあいい、それじゃあ、おまえ、証拠を見せてみろ。戦力になるっていう証拠を』

『えっと、まず、私のことはアユって呼んで。証拠は今見せるから……私の中に眠る魂達よ、私の呼びかけに応えなさい、憑依変化!』

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そう言うと、モクモクと煙のようなものが吹き出し始める。その中には確かにいろいろな形をした霊のようなものが見えた、虫やドラゴン達が、いろいろなものが見えたり消えたりしており、それらがランダムに入れ替わっているようだった。これを憑依して戦うのか? 初めて見る魔法だが、ドラゴンや虎といった力を得られるならば、確かに戦力にもなりそうだ。そして、アユは

『にゃーん』

猫になっていた。前言撤回、本人でも憑依する魂は選べないらしい。一期一会とはよく言ったものだ。

『ぐー』

そして寝ていた。

『さて、パールシュタインの元へ急ぐか』

アユと名乗った謎の少女を放置して、ギルはササル王宮へと向かった。

『パールシュタイン、調子はどうだ?』

『悪くない』

パールシュタインの魔王との戦いの傷は完治していた。宝石の力によるものだろう。便利なものだ。

『よし、それじゃあ、行くぞ』

『どこにだ?』

『虹の空島だ』

飛空艇アレキサンドライト。

それは、パールシュタインが開発中の巨大な飛空艇だった。宝石の力によって空を飛ぶというのは小さなものであれば実現していたが、これほど大きなものを空へと飛ばすのは、時間が掛かると思われていた。機体そのものは完成していたが、それを動力が備わっていなかったからだ。しかし、ギルの超魔法石がその動力を供給し、それは完成したのだった。

『ギル、お前、どこでその力を?』

『ちょっとあってな。話している暇は無い、出発してくれ』

パンダの操縦士はうなずくと、アレキサンドライトを発進させる。それは、風の魔法の纏い、空へと力強く発進した。アレキサンドライトは遥か上空へと、グングン上昇していく、そして、超魔法石から放たれる光が道を指し示していた。

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『光指す方へ向かってくれ、空島はあるはずだ。そして……そこに隠れている奴、出てこい』

物陰に潜む気配。いや、ただ単純に耳が見えていた。兎の耳が。

『あれ、バレた? 画竜点睛を欠く、いや、頭隠して尻隠さずってね。とにかくさ、付いてってもいいでしょ?』

『勝手にしろ。後、隠れてないのは耳だ』

物陰にはアユが隠れていた。抜け目の無く紛れ込んでいたらしい。

その時、ギルは別の場所で魔力の爆発を感じた。久遠の塔で得た力によって、ギルの異変を感じ取る力は飛躍的に増している。そして、この魔力の爆発があった場所は、エルフのポータルがある所だった。魔王が動いたに違いない。まずい、思ったよりも侵攻が早い。

『さて、パールシュタイン。俺は用があるから、一旦、飛び降りる、後はよろしく頼んだ』

『おい、もうちょっと説明をしていけギル。というか、お前、飛び降りるって正気か?』

『心配するな。説明だが、虹の空島には力が眠っている。それは、パールシュタイン、お前の力を魔王へと対抗できるものへと昇華させてくれるはずだ。そうだな、案内役ならそこに居るアユが引き継ぐ』

『おう、泥舟に乗った気持ちで任せておけい!』

アユがドンと胸を叩きながら答える。突っ込むのも面倒だ。後のことはパールシュタインに任せるとしよう。

『は? 余計に訳が分からなくなったぞ』

パールシュタインが呆気に取られるのも無理はない、まあ、何とかなるだろう。アユが何者かも、これで少しは分かるかもしれない。

『じゃあな、後は頼むぞ。後、アユが変な動きをしたら、空から落としていい。いいか、話はちゃんと聞いてやれ、だが、信頼はするな』

『おう、肝に命じた!』

何故か、アユが答えていた。やれやれと言った態度を取るパールシュタインを見ながら、ギルはアレキサンドライトから飛び降りると風を纏い、地上へと落ちていった。


“ギルの物語” 第14話へ続く

ギルの物語

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