ギルの物語|第16話 “魔王の最後”

魔王の無限にも等しい軍勢に対して、ギル、パールシュタイン、零夜の3人はそれぞれの力を補完しながら、切り抜けていく。目指す先は魔王ウェルザーの首一つ。

『ウェルザーは私がやる。借りがあるから』

『俺だって、そうだ』

『おい、お前たち。誰がやるか、よりも、どうやってやるかだろう? 言っておくが、わしはやらんでもよい。パンダは元来平和主義者じゃからな』

『分かってるよ、パンダは心配性だな』

『誰だって心配にもなる』

『借りがあるのは、俺が先だ。フレイラを利用され、キリクとシーラもあいつにやられた。俺が仕損じたら、零夜がやる、それでいいだろ?』

『いいわ。けれど、冷静にならなければウェルザーは倒せない』

『分かってるよ』

ギルの超魔法石が光を放つ。まだ全力を解放してはいない、その能力を制御できるかどうかが分かってなかったからだ。ただ、いくつかの戦いを経た今ならば、半分ほどの力なら制御は可能だと、ギルは直感していた。だが、制御し続けることは難しい、チャンスは1回だけだろう。

『パールシュタイン、防御の方は任せるぜ』

『ギル、チャンスは一度だけだぞ』

『ああ、分かってる』

パールシュタインは空島で手に入れた虹の宝石を掲げる。守護者ラーの力を伴ったその宝石は、脅威を一度だけ退ける力を持っていた。だが、一度使うと、再び使用するには、魔力のチャージが必要になる。このレベルの戦いでは、致命傷となりうる時間だ。結局の所、やはり、チャンスは1回だった。魔王の5色の紋章を使った、攻防の魔術に隙はなさそうに見える。だが、防御から攻撃に転じるとき、どんな強者であっても必ず隙は生まれる。そこを狙う。

『さて、やるとするか』

ギルは風の魔法を二重に詠唱する。それぞれに、炎と水の属性をプラスした風の刃だった。属性を超えた力、さらに相反する力を同時に詠唱出来るのも、超魔法石の力だ。
一つめの炎を伴った風の刃を持ち、ギルが素早く魔王へと近く。前回の戦いよりも、遥かに速く動いているが、魔王に動揺はない。それくらいは予想済みといったところなのだろう。

ギルの魔法を見た魔王は水の紋章から、防御の結界を展開する。それに対して炎を織り交ぜた風の刃を放つが打ち消される。ここからが本番だった。魔王の攻防一体は防御から転じての必殺の反撃で成り立っている。しかし、その攻撃が躱せれば、そこに隙が生じるはずだ。

『パールシュタイン!』

『うむ』

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魔王の反撃の魔法をパールシュタインが虹の宝石の力によって打ち消す。ギルが喰らえば、当然命は無い、しかし、その隙をパールシュタインに打ち消して貰い、一見無防備な状態で相手の攻撃を完全に凌ぐ。そして、二重詠唱によって生み出された、次の風の刃が魔王を打ち倒す……それがギルの作戦だった。

『甘いな』

魔王の声がギルへと届く。そう、魔王も同時に2つの詠唱を放っていたのだった。1つ目が躱されることを計算にいれた二弾構えだった。フレイラを利用された、怒り、そして、焦りが、ギルの計算を狂わせていたのかもしれない。

『ちっ、しまった』

『だから、言ったでしょう。冷静になりなさいと』

しかし、その魔法受けたのは、ギルではなく、背後から飛び出して来た零夜だった。零夜の体が弾け、衝撃がその小さな体を伝い、全身へと走る。どうみても、即死は免れない衝撃。

『零夜!』

ギルが叫ぶ。だが、零夜は死んではいなかった。いや、違う、死んだのだろう。時が戻るようにして、零夜の存在が再生していく。10年前、ギルが零夜と戦ったときにも見た光景。あの時はギルが零夜を倒したが、すぐに蘇った。死ぬという概念自体が、零夜にとっては、再生可能な事象なのだ。

『これは、やはり……永劫の力か』

『あの時の借りは返すわ。ウェルザー』

完璧な攻撃はその完璧さゆえに、破れたときは脆い。

『哭け、十六夜月下』

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零夜の剣が風の慟哭と共に煌めくと、魔王の体へと突き刺さる。その傷口から、血と魔力が滝のように宙へと霧散していく。

『ギル。言っておくけれど、ウェルザーに借りがあるのは私が先よ、それも、文字通り、何千年も“先”にね』

魔王は最後に呻くように言葉を紡いでいた。

『……もう遅い。魔界門から、災厄の種はこの世界に撒かれた。絶望の使者と、そして、魔女が現れるのも時間の問題だ』

『知っているわ。それが、何よりも、私の待ち望んだことだから』

そして、魔王は吸い込まれるように、魔界門の方へと消えていった。零夜は剣を仕舞うと、ギル達の方へと向き直る。

『魔界門を閉じに行きましょうか。その間に教えてあげる、私の辿って来た物語と、倒すべき真の敵を』

そうして、零夜は語り始めたのだった。遥か“未来”の物語を。


一方、魔界門では、


『なんだ。割りと役立たずね。これだから、新参者は頼りないってね』

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アユが魔王を足蹴にし、悪態をついていた。

『さて、あいつらも到着したし。もう、これも用済みってね』

ポイっと魔王の体を捨てると、アユは歩き出す。

『私の本当の魂、早く、早く取り戻さないと』

アユの空虚で透き通った目は何かを求めているようだった。


“零夜の物語”第0夜へ続く

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