ギルの物語|第17話 “ササル王宮の崩壊”

ギルは零夜の話を思い返していた。魔界門に着いたところで続きはまた後でと言っていたが、今話すべきなのはここまでなのだろう。

零夜の話は突拍子も無いが、同時に信じられるものだった。それだけ、この世界で起こっている事象は異常で説明のつかないものだ。零夜は10000年の未来からの使者。そして、この世界を過去へと戻し続ける、時還の魔女を討つ者。ギルには今まで夢の正体も分かった。彼らの言う、正史の王とは零夜の話に登場したギル・アルハマートの事であり、それは、俺自身が辿るはずだった本来の歴史の姿に違いない。あの夢はやはり、アルハマートが辿った正史の映像なのだ。夢の中の俺は……最終的には世界の全てを焦土と化していた。

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しかし、いくつかの疑問が残る。

『確認しておきたい。つまり、その“正史”では、俺が世界を焦土と化したギル・アルハマートなのか?』

魔界門を閉じ終わったギルが零夜へと聞く。

『ええ、その通りよ』

『何故、俺はアルハマートとなった?』

『知らないわ』

『そうなのか?』

『運命とは一度転がれば、一方へと向かっていく。だけれど、転がるまでその事象は揺らいでいる。あなたはそういう状態にあったのでしょう。正直に言えば私も意外だった。あなたの力を私が"吸収"して、魔女と戦うのが私の計画だった。けれど、あなたはこの世界では仲間と共に私の所に来た。あなたの辿る運命も含め、ここの歴史は本来のものとは大きく変化している。ただ……』

『ただ、なんだ?』

『あなた、アルハマートから干渉を受けているわね』

『あの夢のことか?』

『やはりそう……。アルハマートの干渉の目的。それはこの世界への顕現。アルハマートは再び、この世界へと戻ろうとしている』

『そんな事が可能なのか? いや、そうか器さえあれば可能か…』

『再顕現には具現化するための器が要る。だけどそれは、それに近しい魔力や性質を持つ者で無くてはならない。故にアルハマートはかつての自分であるあなたの体を乗っ取り、時還の魔女と戦い、最終的にその力を奪おうとしている』

『なるほど、それは……困るな』

ギルは思案する。あの夢がアルハマートの干渉だとしたら、その源は……超魔石かもしれない。夢は久遠の塔への道を指し示し、そして誘導していた。どちらにしろ力を求める必要はあったが、その干渉を退ける方法も探さなくてはいけないということだ。

『わしも話に混ぜろ』

『……それも、嫌だな』

『ボソッと言うな。殴られたいか。わしからも質問いいか? 今はこの世界の危機の問題の解決が先だ。その魔女とやらが、来るのはいつだ。そして、零夜。お前の仲間であったはずの奴らが現れるとして、そいつらはどのくらい強い?』

『勘違いしないで、私に仲間なんて居ないわ。魔女の側近の強さは、魔王以上よ』

『おいおい』

ギルが口を挟む。

『心配しないで、手が無い訳じゃない。それに、今のこの"世界"なら、私だけでもあいつらとは戦える』

『いや違うぜ。相手がどんな強かろうと、俺達なら勝てる。勘違いしているのはな零夜、俺達はもう仲間だって事さ。キリクとシーラもすぐに復活して来るはずだ。あいつらは強いぜ、お前が思っているよりもな』

『あなた、何を言って……』

『ふん、パンダの教えでは一度でも一緒に戦うか、飯を食ったものは仲間だ』

パールシュタインも賛同する。

その時だった。遠くで大きな音と共に闇の瘴気が立ち上った。遠見で察するに、そこはササル王宮のある場所だった。

『あれは、わしの王宮の方向。行かねば、アレキサンドライト!』

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そういうや否や、パールシュタインは手を挙げ、虹の宝石を輝かせる。アレキサンドライトが上空へと現れ、パールシュタインは乗り込んで行く。

『パールシュタイン、待てって。俺も行く!』

『待ちなさい』

『零夜?』

『ギル、あなたにはやらなくてはいけない事がある。それは、内なるアルハマートとの対決。未来からの干渉を跳ね除けなさい、あなたがアルハマートになってしまえば、私はあなたを殺さなければいけない』

『それならそれでいいさ。俺の力を吸収すれば、魔女とも戦えるんだろ?』

『それは最終手段よ。出来れば殺さずに済ませたいわ』

『何故だ? 最初はその計画だったんだろう?』

『私達は……仲間だから。あなたが言ったことでしょう』

零夜の意外な答えにギルは思わず微笑む。

『……分かった。絶対に死ぬなよ』

『誰にものを言っているのかしら』

『余計な心配だったな』

パールシュタインと零夜はササルへ向かい、ギルはかつての育ての親であり、魔術の師匠でもある、ローライトの元へと向かった。膨大な地下図書を管理する、彼なら干渉を打破する術を知っているかもしれない。

パールシュタインがササルへと着いた時、すでにササル王宮は崩壊しかかっていた。逃げ惑うパンダ達に逆行するように、王宮の中へと急いで向かう。その内部では、崩れゆく中、一人の人間の女性が立っていた。

『クスクスクス』

この場において、とても似つかわしくない笑い声。それは、この状況を楽しんでいるかのようだった。あれは敵だ、瞬時に理解したパールシュタインが先手を打つために駆ける、だが、その瞬間に白と黒の双剣がパールシュタインを捕えていた。先手を取られ、罠にかけられていたのはパールシュタインの方だった。

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『貴様。何者だ』

倒れ伏したパールシュタインが問い掛ける。その間にも崩壊したササル王宮は、別の城へと姿を変えていく。それは、途方もない破壊と、そして、再生の力だった。

『私の名前はアミル。ようこそ、ライトキャッスルへ。儚き希望に縋りしもの達よ』

“ギルの物語” 第18話へ続く

ギルの物語

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