ギルの物語|第18話 “七曜の占星術師 ローライト”

ギルがローライトの庵を訪れるのは、十数年ぶりだった。

初めてギルがこの土地へと来たとき、既に天涯孤独の身だった。ここへ来るまでの記憶は残っておらず、故郷の事も家族の事も何一つ覚えていなかった。ローライトからは衰弱した状態で倒れていたギルを保護し、ここへ連れて来たと聞かされた。それ以降、ギルはここに住みながら、ローライトから魔法を教わった。ギルの素質は天才のそれであり、みるみる内にその能力を開花させていったのだった。

ある時、ギルは思った。ローライトは自分の過去を知っているのではないかと。それは直感でしかなかったが、その時の彼の直感は既に確定的な予言にも近い力を持っていた。それを察したかのように、ローライトは世界を見て回るようにギルへと言った。そして、ギルはそれを素直に受け入れたのだった。ローライトは師匠としての実力のみならず、その理念、生き方に至るまで尊敬できる人物だった。知るべき過去ならば、教えられているに違いない。ならば今は知るべき時ではないと、ギルは思ったのだった。

そして、世界を見て回りたいという好奇心は彼を動かし、多くの人々から知見と経験を得たのだった。

『誰かいるか?おーい!じじい!』

『誰じゃ?ちいと静かにしてくれんかのう』

31949390-b85d-48a2-82c0-26b52100a19d.jpg

ローライトはまじまじとギルを見た。まさか、とは思うが俺を忘れているのか?

『おお、お前か。大きくなったな』

十数年ぶりとはいえ、愛弟子だ。覚えていて当然だろう。

『タロウよ』

『違ぇ!』

『すまぬな、ジロウ?』

『わざと言ってるだろ!』

思い出した。愛嬌のある、悪く言えば、食えない性格の師匠だったのだ。

『冗談じゃギルよ、久しいな。最近地下図書館から、今まで見たことのない類の物語の本が発見されてな。どこに隠れていたのか非常に不思議だが、それらの本にタロウという名の人物が良く出てくるものでな。ついついという奴じゃ』

『まったく……』

遠くでドタバタとした、足音がした。ししょー、という抜けた声もする。

『新しく弟子をとったのか?』

『才能ある純粋な弟子達じゃ。まあ、それゆえに善にも悪にもなりうるがな。よい師に恵まれて良かった、というところじゃろう』

『そうだな』

これに関してはギルも同感だった。自画自賛のものいいは相変わらずだが、ローライトならば、正しい方向へと導くに違いない。

『それで、何の用じゃ?』

『まあ、ちょっと信じられないかもしれないが、聞いてくれ』

……

ギルは起こったことの一部始終をローライトへと話した。

『うむ、そうか。この世界に起こっている不可解な現象についてはわしも考えておったが、まさか、ここが作られた過去世界じゃとはのう。しかし……』

『しかし、何だ?』

『不可解なこともあるのう。この世界が時還の魔女に作られた過去世界として、何故こんなにも長い間、世界が形成されているのかのう?もちろん、作られた世界であるなら、登場人物に過ぎない我々にそれを認識は出来ないじゃろう、5秒前に世界が作られた可能性もあるわけじゃからな。だが、零夜の存在を考慮すれば、少なくとも、この世界は10年以上は形成されていることになる。本来の歴史には存在しない零夜という吸血鬼にギル、おぬしは10年前に会っているじゃろう?』

『そうだな。だから、この世界はそれ以前に作られたとして間違いない』

df33eb5d-db99-4ea7-9382-ce07d783a010.jpg

『となると、10年の間、時還の魔女とやらは何をしていた?それが、魔力を吸収するシステムなら、尚更何もないのはおかしいと言えるじゃろ。零夜の話では、過去世界が形成されている時間はそこまで長くはないはずじゃ』

零夜が嘘をついている?いや、零夜が何かを隠しているのかもしれない。だが、それらについての結論はギルにはもう出ていた。

『まあいいさ。零夜は仲間だ。信じる以外の行動は時間の無駄だ。じじい、俺がここに来たのは、アルハマートの干渉を退けるためだ』

『ギル、おぬし成長したな』

『そうか?じじい、俺がアルハマートとなる理由に心当たりはあるか?』

ローライトはいつになく真剣な表情に変わった。心当たりは……あるらしい。

『わしから話すことではあるまい、そのアルハマートにやらに聞くが良い。森の奥に洞窟がある。そこの奥は不思議な魔力で覆われていてな、精神と肉体の境界を越えることができる。本来は深い瞑想に入る時のみに使う、わしのとっておきの場所なんじゃが、止むを得まい、使ってもよいぞ』

『すまないな、じじい。時間がない、もう行くぜ。それと……』

『分かっておる。もし、アルハマートとやらに体を乗っ取られたら、わしが、お前を捕まえて、その零夜とやらに差し出してやるわい』

『ああ、頼んだぜ』


“ギルの物語”第19話へ続く。

ギルの物語

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー

FoW World - ストーリー