ギルの物語|第4話 “人魚姫 シーラ”

『それで、こんな危ない所まで、何をしに来たんだ?』

ギルが問い詰める。

『いい年した娘が、遊びで来てるんじゃない』

パールシュタインも続く。キリクはお前らが言うか、という表情をしていた。

『あの〜』

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上空の雲の正体はシーラと名乗る人魚の仕業だった。人魚は陸上では人間に近い形態で活動できる。ただ、乾燥に対しては少し弱い。なので、シーラは天候を操り、雨を降らしていたのだという、簡単に見えて強力な魔法だ。この人魚の姫様は存外、只者ではないのかもしれない。

『それで、どうしてこんなところに居る?』

『それはですね〜』

『その喋り方は何とかなんねーのか? こう、イライラするんだよな。後、雨を止めてくれ』

『はい〜。雨は一旦、止めますけども〜〜』

『ども〜?』

『至極残念ですが、私の喋り方を変更して欲しいという要望にはお応えし兼ねます』

『出来るじゃねぇか』

『いえ〜、冗談です〜。私、こうみえましても紫翆城の姫様でして〜、帝王学を少々習っておりますから〜。対外的な喋り方というのもですね〜、学んでるんです〜。でも、続けてるとストレスが溜まって雨がざんざん振りになってしまうのです〜。乾燥してもそうなっちゃうので、そうなる前に先へ進みましょうか〜』

食えない奴だ。雨が降られては困るから口調は諦めざるを得ない、結局目的も聞けなかったが、大方、世間知らずの姫様が外の世界を見たいといって飛び出して来たといったところだろう。噂が各地にばら撒かれて居るなら、可能性としては大だ。

『ギル、お前、さっき、変な生物を作っただろう、あれは何だ?』

パールシュタインが聞く。

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『ああ、自然から生み出した魔法生物だ。本来、魔法の仕組みは魔石を触媒として、魔力の抽出、詠唱、そして、効果発動までが一連の流れだろ、だけど、それは危急の戦いでは命取りになるタイムラグを生む。俺が生み出したのは触媒でもある生物だ、俺はそれをエレメントと呼んでいるがな。戦いの補助、そして、破壊されたとしても、魔法を使うための触媒として残る。そうすれば、魔力抽出の手間が省けるという訳さ。お前の宝石も同じようなものだが、そっちは魔力のブーストに使うようだがな』

『ふん、良く分かるな』

『まあ、天才だからな。そうだ、キリクは魔法を使えるのか?』

ギルは興味なさそうにしている、キリクへと話を振る。

『赤竜人は魔法などに頼らない。体力さえあれば、あらゆる格闘術で相手を仕留められる。無敵だ』

『そうか、すげーな。体力が無くなったときはどうなるんだ?』

『何も出来ず死ぬ』

『潔いな』

『だから、死なないように常に食料は欠かさない。国の教えだ、食料となるものには最大の敬意を払えと』

『俺のエレメント達は食べないでくれよ』

『あんな栄養の無いものはいらない』

『ああ、理由はともあれ、ありがとうよ』

『あの〜』

シーラが口を挟んでくる。何だかんだで、喋りたがりなのかもしれない。

『何だ?』

『私も魔法を使えます〜』

『分かってるよ。雨を降らすのも、魔法の一つだろう、それで?』

『他に見たい魔法とかありますか〜』

ギルは嫌な予感がしていた。何といっても世間知らずであろう姫様だ。今、自分の服も乾き途中だ。これ以上濡れるのは避けたい。

『そうだな。ならば、1つ見せて貰っていいか、これからの戦いでもしかしたら、使えるかもしれない』

『承知いたしました〜』

シーラが魔力を集中させる。やはり、水系統の魔法だ。それも、そこそこ強力な奴。よほど優秀な魔術師に師事したのだろう。その魔力が放出される瞬間、ギルは咄嗟に葉っぱで作ったエレメントの防壁を纏う、雨から身を守るようにピッタリと隙間なく。

『えいっ』

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シーラの両手から噴水のように水が噴き出す。それは、生き物のようにあたりをグルグルと回り、そして、ギルとパールシュタインの真上で弾けた。

『なるほど、お見事』

ギルはエレメントの“カッパ”のおかげで水を被らずに済んだことに安堵していた。これ以上不快な思いをすると、旅に差し障る。それに対し、パールシュタインはもろに水を被り、濡れパンダと化していた。愉快だ。

『お見事じゃない、説明して貰おうか』

『そうだな。水難の相ありだぜ、パールシュタイン』

『お前という奴は……』

『おい、遊びはそこまでだ。見えて来たぞ、あれが夜城だな』

いつの間にか、日は陰っていた。そして、キリクが指し示す先、そこには黒い城が現れていた。

“ギルの物語”第5話へ続く。

ギルの物語

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