千年の呪法と秘術

空に浮かぶ蒼い月。その月の裏側にある都の一室で、輝夜は目を覚ました。

 

『……いつも通り、最悪の目覚めね』

 

彼女は毎日、同じような夢を見ていた。
千年前に体験した戦い、人々との別れの記憶、
そして、封印している「支配者」達の怨嗟の声が彼女の存在に溜まっていき、
それが夢として毎日少しずつ増えては、現れていた。

不老不死となった者として、それは定められてた苦悶と言えるのかもしれない。

 

かつて、六賢者の一人、グラスバレスタは言っていた。

 

『種という単位で見れば、生と死の繰り返し、それが存続にもっとも重要なものだ。
水が流れるように、生命のエネルギーの流れは循環によって成り立っている。』

『しかし、不老不死はその流れを一所に押しとどめてしまう。
死なないことは生き続けると同じではない。
むしろ、正反対とすら言えるだろう。だから、これは呪法と呼ばれるのだ』

 

しかし、その歪な生命の流れこそが、
クトゥルフを封じ込めのに必要なものだった。

千年前の戦いでは、不老不死となった輝夜と六賢者がすべての力を結集し、
彼らを封じ込める魔法を完成させた。

ただ、それを封じ込め続けるためには触媒が必要であり、
それが、不老不死となった輝夜自身だったのだ。
それは、一つの終わりであり、彼女の苦しみの始まりとなっていた。
そして、千年もの間、彼女は蒼き「幻想」の月からこの星の発展を見続けている。

 

『輝夜、私はそろそろ行くわ。「奴」が現れたから』

 

月へと訪れていたアリスが輝夜へと話しかける。

 

『そう、あなたにはあなたの戦いがあるのですね。
今の私にはわからないけれど』

『輝夜にもそれが分かる時が来ると思う、
でも、今、話すことではないから。
さてと、私が持っている幻想石は、ここに置いていくね』

『ありがとう、私の秘術を真に完成させるには、
六賢者の力がまた必要なのです』

『千年しか封じ込められなかった奴らを、また封じられるの?』

『いえ、今度は封じ込めるのではありません。
千年は封じられる期限であると共に、
秘術の準備期間でもあったのです、
この千年の秘術を本当に完成させるための』

『輝夜がそう言うなら大丈夫ね』

 

『もし、私の秘術が上手くいって、
あなたが他の世界へと旅立つならば、渡したいものがあります。
お互いに「生きて」いれば、また、会いに来てください』

『分かったわ、お姫様。それじゃあ、またね』

 

そう言うと、アリスは遠くへと旅立っていった。

 

『さあ、始めましょう。千年の時の秘術を』


千年の時の秘術。その真の姿。それは輝夜に、
千年の間の生命のエネルギーを蓄積させることだった。

その厖大な生命エネルギーを、呪法によって封じ続けるのが千年の呪法。

そして、それを千年の時を越えて解放し、
不死なる「支配者」達を生あるものへと転生させるのが千年の秘術。

問題は、それを解除するためにも、呪法の時と同様に膨大な魔法の力、
六賢者の力が必要になるということだろう。

 

しかし、その六賢者の力も揃いつつある、
一つはここにある幻想石ムージュダルト。そして、

 

『ついに始まるね。輝夜』

 

 

一匹の使い魔がいつの間にか現れていた。
それを放ったのは六賢者の一人である、聖風の魔導師 フィースシング。

 

『フィースシング。あなたの力も必要なのです。
手伝ってくれますね』

『もちろんだよ。
やっと、あの気持ち悪いやつらに一泡吹かせられるんだしさ。
一応、ゼロも手伝ってくれるはずだよ……
うー、まあ、多分だけど』

『私も今から、月を出ます。地上で、パンドラと合流しましょう。
彼女はグリムとルミアの希望の力を受け継いでいる。
そして、彼女の元には残りの六賢者の真魔石もあります。
そこから黒い月へと向かいましょう』

『それで最後の戦いだね。そうそう、千年ぶりだけど、
輝夜は変わらずに元気にしてた?』

『変わらず、ずっと最悪だったわ……今日まではね』

『そっか、明日はもっといい風が吹く。僕が保証するよ』

『そうね……そうなるといいわね』

 

宇宙を渡り、蒼き星へと向かう輝夜の心には希望と、
そして、喜びがほんのわずかに芽生え始めていた。

2015年6月21日 日曜日

物語”月姫の帰還”

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