零夜の物語|第0夜 “永劫”

零夜の語る“未来”の物語。
それは、リ・アースに古の皇帝アルハマートが現れ、ミリアムとラピスが共に戦う少し前まで、物語は“遡る”。

月下天台と呼ばれる、遥か空へと垂直に伸びる台地。遥か昔に行われた戦い残滓だろう、月下天台という名前こそあれ、魔力の滞留が空を覆い、ここには月の光すら指すことはない。鳥はおろか強大な力を持つドラゴンもここには生息していない、並のものでは近付くだけで、命を落としてしまう。地から遠く、天からもほど遠い、この場所に彼は居た。

御影清十郎。永劫の力を持つ吸血鬼。彼はこれからの戦いに思いを馳せていた。

『ラピスよ、奴を本当に倒すことが出来るのか?』

ギル・アルハマートの力は清十郎にとっても、底の見えないものだった。かつて戦った、あの神竜ラグナロクかそれ以上の魔力を持つ古の皇帝。もし、ラグナロクを倒したときの“あいつら“が生きていたとしても、勝つことは難しいように思えた。いや、“あいつ”さえ居れば倒すことは可能かもしれないが。

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『しかし、あれ程とはな』

『心配はご無用です。父様』

その刹那、影から一人の少女がこの地に舞い降りた。何の造作もなく、何の前触れもなく、何の気配もなく。清十郎すら、話しかけられるまで、その存在を認識出来なかった。しかし、それは、誰よりも知った顔だった。

『零夜か、久しぶりだな。何をしに来た?』

『父様に頼みがございます』

『ほう、お前が生まれてから、初めてか?』

『ええ、最初で最後の頼みでございます』

『ふっ、どこまでも“あいつ“に似て来たな、それで心配が無用とは?』

『アルハマートは破れます』

『何故、そう言える。あいつの力はお前も見たはずだ、お前が倒すとでも言うのか?』

『いえ、今の私では倒せはしないでしょう。この世界の力が結集され、そして、大いなる偶然が無ければ、アルハマートを倒すのは不可能です。万に一つの可能性。しかし、それでも、分岐点は過ぎました。もう、可能性があればそれを辿る。そういう運命なのです』

そう言うと、零夜の左眼が暗く銀色に輝いていた。それは、目の前のものを見るのではなく、本来見えないものを見通すような眼だった。

『まさかとは思ったが“眼“を継承していたか。忠告しておく、あまり、その力を使うな』

『心得ております』

ラグナロクの眼。清十郎が持つ、ラグナロクの血と同種であり、神竜ラグナロクを源流とした力。“あいつ”の力を継承している零夜はすでに清十郎の力の及ぶ範疇を超えようとしていた。

『頼み事とはなんだ? 無駄話がしたい訳ではあるまい』

ええ、と小さく言うと。零夜は畏まった態度で、清十郎へと言葉を伝える。

『父様の永劫の力をいただきに参りました』

『そうか』

清十郎は理解した。これから先に起こるかは分からない、しかし、これから先、零夜が備えるのであろう、相手の強大さを。

『我が娘とはいえ、そう簡単には渡せんな。お前の覚悟を見せて貰おうか』

二人の膨大な魔力の放出に空中を滞留していた魔力が揺らいでいた。その刹那の後、零夜の黒剣が清十郎を襲う。清十郎はそれを紙一重でかわすと、零夜へと向き直った。

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『十六夜月下か。使いこなせるようになったか?』

『いえ、まだ、1割にも満たないでしょう。母には遠く及びません』

『その剣は命を吸って輝く剣だ。自らの血を吸わせて初めて輝きを増す、だが、それには』

『無限にも等しい時間が必要になる……でしょう?』

『その為に永劫の力が必要か。無限の苦しみを味わうことになるぞ』

『心得ております』

『その眼で何を見た』

『アルハマートが倒れ、そして、ラピスも。しかし、それ以上は何も』

『ならば、何故、永劫の力を欲する?』

『見えないという事はそれ以上の未来が存在しないと言うことです。母から受け継いだ、この眼の力は父様もご存知でしょう』

『そうだな。只事ではあるまい』

『ええ、杞憂では終わらないでしょう』

『ふっ、そうか。ならば、私から話すことはもう無いな』

『私からもこれ以上は何も』


………


清十郎は仰向けになり、地に横たわっていた。辺りを見れば、魔力の滞留が一時的に揺らいだためか、地上の世界を見通せるようになっていた。下界を見下ろせば、巨大な樹がこの世界を覆い尽くさんとしている。ラピスの召喚によるものだ。零夜は既に次元の向こうへと去っていった。これから先起こる不確定な事象に巻き込まれないためにこの星を出たのだ。しかし、考えられるとすれば、やはり“時還”の力か。

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『零夜の言った通りアルハマートは倒れたか、ならば、私は私のやるべきことを成すだけだな』

清十郎は体を起こし、地上へと舞い降りる。しかし、その体に永劫の力はもう残されてはいなかった。


“零夜の物語” 第1夜に続く

零夜の物語

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