零夜の物語|第9夜 “神竜ラグナロク”

次の過去世界は、六賢者の魔石戦争のさらに4000年以上も前。ラグナロクとの戦いの場だった。

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かつてラグナロクは魂を求め、異世界からリ・アースへと訪れた襲撃者だった。アルハマートによって奪われた魂の残滓にラグナロクの身体が惹きつけれられ、ここへと転移してきたのだ。魂を求めるが故に、全てを喰らう竜となって。アルハマートによって焦土と化したこの世界にも新しい人々と文化が生まれ、1人の卓越した魔術師がこの世界を統治していた。その名前をウェルザーといい、彼は後の六賢者の師匠ともなった。

零夜がこの世界で目覚めたとき、魔女から守らねばならない存在を感じた。魔女の狙いはラグナロク、そしてウェルザーだろう。本来は父、清十郎もラグナロクとの戦いに参加していたはずだが、彼の力は今零夜の中にある。その影響か本来は居たはずの仲間も居ない。この過去世界でのラグナロクとの戦いはウェルザー1人だけで行われていた。

『師匠!お久ぶりです!』

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黒フクロウの姿から元に戻っていたゼロがウェルザーへと話しかける。ゼロは魔力が充電されたタイミングで元に戻れるが、その時を自ら選べる訳ではない。ちょうどいいタイミングだった。

『弟子を取った覚えはないが』

ウェルザーは怪訝そうにゼロを見ると、淡白に答える。それもそのはずだ。彼が弟子を取るのは何千年も先なのだ。

『あの、助太刀します!』

ゼロの声には緊張が見てとれた。彼女はそう、とても律儀な性格だっだ。ウェルザーもとりあえず、突然現れた我々を敵でないことは認識してくれたらしい。だが、そんなバタついたやりとりを眺めている場合ではない。ウェルザーとラグナロクとの戦いは膠着状態へと陥っていた。ラグナロクは大きな翼で空を覆い、こちらを伺っている。

そして、そこに現れたのは、

『困るわね。それを倒されてしまうと、こちらも、魔力が足りなくなってしまうかもしれないし』

シェヘラザードだった。やはり彼女の狙いはラグナロクだろう。

零夜はシェヘラザードに注視しながら素早く動く。だが、シェヘラザードにはまだ動きはない。

『おい、お前達。未来人か?』

ウェルザーが突然口を挟む。

『何故それが?』

『お前が、取ってもいない弟子だと言うからだ。論理的解決がそれしかない。後はカマを掛けてみただけだ』

『あっ』

見透かされたゼロが慌てる。洞察力もそうだが、自分の考えた突拍子もない解答を信じ切れる精神構造も卓越したものだった。

『後な、あいつは敵か?何かあるぞ。気をつけろ』
ウェルザーはシェヘラザードを指して言った。本気じゃない?シェヘラザード…もしかして、ラグナロクさえも囮なのだろうか?

『ふふふ……気づくのが遅い!』

黒い球体が出現したかと思うと、その中から突然赤いずきんの少女が現れる。ニャ……

『私の名前はスカーレッドよ!』

思考を読んだかのようにスカーレッドが吠える。そして、零夜が体勢を立て直すよりも早く、スカーレッドは移動の時間を削り取るようにして高速で接近する。さらに

『クスクスクス』

ルミア。いや、今は絶望姫アミル彼女もまた現れた。

『勢揃いとは。狙いは私の存在そのものか』

『ご名答よ。あなたの永劫の力はとても厄介なの。まるで、この世界に巣食う病原体のよう。だけど私の力を最大まで使えばその因果も断てる。私はその間に何も出来ないけれど、それならあなたに殺して貰えばいいのよ。ねぇ、スカーレッド』

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アミルの因果を断つ魔法が零夜を包み込む。そして、スカーレッドの強烈な一撃が零夜へと襲い掛かった。

『零夜!』

ゼロが叫ぶ。粉々になった山の中で零夜は生きていた。だか防御した両腕は2、3分は使い物にならないだろう。

『死なないなんて、やるじゃない』

『褒めても何もあげないわよ』

『ふふふ……勝手に貰うから気にしないで』

スカーレッドが再び零夜へと向かう。欲しいものは私の命というわけね。

『さて、状況は理解した』

その時、言葉を発したのはウェルザーだった。彼は今ある状況から、ある程度の仕組みを理解した。そして、少なくとも自らが犠牲になれば、この少女を救えるであろうこと。自分よりもこの少女の方が、これからの戦いにおいて鍵となる存在であるという結論を導いた。自らの魔法力に絶対の自信があったウェルザーは、これらの敵が誰も歯牙にも掛けないことが癪に触り、一泡吹かせたいという気持ちもあったのかもしれない。

転移の魔法が零夜とゼロを覆う。

『俺なら多分そうだな、40秒は時間が稼げるだろう。今回は貸しにしておく。いつか返してくれよ、未来の弟子と謎の少女よ』

『必ず返すわ。取り込まれたあなたを。必ず殺して、そして救うわ』

ウェルザーの風の魔法が零夜とゼロを不可視にし、遠くへ運んだ。

そして、ウェルザーとラグナロクを吸収した、魔女は再び次の過去世界へと向かうのだった。

“零夜の物語” 第10夜に続く

零夜の物語

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