「七世界の王」第1章 聖王ファリアと不思議な少女

「七世界の王」第1章  聖王ファリアと不思議な少女

ファリアは世界を救いたいと思うほど、自分を英雄だとは思っていない。彼女は目に見える者たちを、守りたい。ただ、それだけを願っていた。

その思いが決意となったのは、10年も前のことだ。ファリアには年の離れた兄と妹が居た。兄の名はラース、妹の名はシャルロッテと言った。兄はグロリアの王族の歴史を辿っても類を見ないほどの剣と魔法の才能を持っており、次期王として早くから期待されていた。そして、才能はあれども奢りはしないその性格は誰をも愛し、誰しもに愛された。兄に任せれば安泰、国民の誰もがそう思い、そんな兄をファリアは誇りに思っていた。

しかし、神がその兄の才能を妬んだのか、妹のシャルロッテは生まれつき病弱だった。その病を治す方法はどこの名医にも見つけられず、それを止める方法は世界樹の雫を使って生き延び続けることしかできなかった。シャルロッテは王城の一室から出たことは無く、いつも、その窓から、外を眺めていた。彼女の親友は毎朝、起こしに来てくれる聖鳥と、外を駆け回る聖狼だけだった。それでも、シャルロッテはいつも微笑み、「私が病弱でも、その分、兄と姉が自分の分まで生きてくれるのがうれしい」と言っていた。

そんなある日、妹の病気を治す方法があるという情報が兄の元へと届いた。その情報源は定かでは無かったが、妹を愛する兄は、旅立つことにした。その方法を知るものは、灼熱の火山セルトのさらに向こう側にあるという幻の都市、ヴェル・サヴァリアに居るという。

「行ってくるよ、ファリア。僕は必ず戻る。約束する。だから、それまでの間、この国とシャルロッテを守っていて欲しい」
「お兄様、私にはそんな大役は無理です! それに、セルトの向こう側に何かあるなんて……信じられません。セルトに住む者でさえ、誰も向こう側には行けないといいます。それに何故、お兄様が行かなくてはいけないのですか」
「ここで、シャルロッテを救えなければ僕は一生後悔する。それに、僕以外にあの火山を越えられる者は居ないだろう。他の誰にも任せられない。そして、この国もファリア、お前にしか任せられないのだ。僕には分かる。王としての資質は僕よりも、ファリア、君の方が上だ。今は信じられないかもしれないが、僕の愛する人達を守ってくれ、愛するファリア」

そう言って兄は旅立っていった。

兄が旅立った後、ファリアは川の岸辺で泣いていた。兄がもう戻って来ないのではという不安と、この国を守らねばならない不安の両方が彼女の心を締め上げていた。

「どうして泣いているの?」

そんな時、泣いているファリアにどこからか現れた、不思議な少女が声を掛けた。

「お兄様が行ってしまったの」

ファリアはその少女を見るとそう答えた。

「戻って来てはくれないの?」

不思議な少女はまた尋ねる。

「戻って来てくれるって言っていたけど」
「じゃあ、あなたは何をするべきなのかな?」
「帰れる場所を守ることだと思う。でも、私には王は……」
「私ね、帰れる場所があるって素晴らしいことだと思う。私にはもう無いけれど、守れなかった後悔はあるの。だから、私から言えるのは、あなたを信じくれた人だけでも、信じて、守らなきゃいけないってことかな」
「あなたは一体?」
「ごめん、私はそろそろ行かなくちゃ、じゃあね。あなたなら出来る、私には分かるよ」

そうして、不思議な少女はまた、どこかへと消えていったのだった。

「お兄様と一緒のことを、誰だったのだろう? 幻だったのかな」

その後、彼女は伝承の湖から聖剣エクスカリバーを授かると、グロリアの王を継いだのだった。

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そして、10年後。聖王とまで呼ばれるようになったファリアは、炎王メルギスと国境沿いで対峙していた。その最中、不思議な情報が兵士から寄せられていた。

「そうか、お前もその少女を見たか、よし下がってよい。ゆっくり休むといい」

とある不思議な少女の目撃情報が聖王ファリアの元へ寄せられたのは、この戦いが始まる前から数えると、これで4回目だった。

1人目は空飛ぶ不思議な少女を見たと言い
2人目はドラゴンに襲われて窮地に立たされていた兵士が騎士の少女に助けられたと言い
3人目は傷つき王城へ帰る最中、倒れ伏したところを僧侶の少女の癒しの魔法よって救われたと言った。
そして、先ほどの4人目は幻のような盤を持った少女がそこから何かを取り出すように小さな兵隊を召喚していたと話した。

「謎の少女か、敵ではないようだが。そう言えば、昔、同じようなことがあったな。あれは……」
「ファリア様、メルギスが動き始めました」

ファリアが昔の事を思い出す前に、伝令が戦いの始まりを告げる。

「分かった。皆、行くぞ」

彼女は14歳のときに聖剣エクスカリバーを授かると、それ以来、この国を守り続けて来た。清廉潔白、使命感を強く持ち、誰に対しても平等に接する。臣下だけでなく、民衆の人気も高い。この世界において、もっとも統治された国、そこの王であるファリアが聖王と呼ばれる所以だ。

対して、隣国の王、メルギスは対照的にもっとも統治されていない国とさえ言え、その置かれている環境は苛烈そのものだ。今も燃え盛る火山セルトを根城にしている彼らは、日常的に生き残りを賭けた戦いを行っている。戦いのためのドラゴンを使役する戦いは、ドラゴンの食料となる危険を秘めている。その環境において、炎王メルギスは王の座をものにした。先代の王を倒すことによって。

「ほう、貴様が噂に聞く聖王か、ここの土地と資源、頂いていくぞ」
「私には使命と守れねばならないものがある。侵略者には一歩たりとて入れさせはしない。例え誰であっても、な」

ファリアとメルギスは対峙していた。戦いの火蓋は今にも切って落とされようとしていた。

「あれは……」
「どうした、パーシヴァル?」

ファリアが聖剣に秘められたもの、ある世界の「記憶」から呼び出された英雄。その1人であるパーシヴァルがファリアに声を掛ける。

「私達の記憶と同じくする存在を感じます。もしかしたら、魔剣によって使役されているのかもしれません」
「円卓の騎士と言ったか」
「はい、お気を付けください。もし、「あいつ」が相手方に居るなら、油断なりません」
「分かった。しかし、軍と軍の戦いは犠牲も大きい。私が一騎打ちで、メルギスを仕留める。皆はここで待っていてくれ」

ファリアは一歩前へ出ると、メルギスに声を掛ける。

「セルトの炎王よ、一騎打ちで勝負を決めよう。いたずらに戦いを伸ばすのはそちらも望むところではあるまい」
「いいだろう。魔剣の力、その身に味わうがよい」

戦いは、両軍が見守る中、王同士の一騎打ちで始まった。

しかし、レガリアを持つもの同士の戦いが、すぐに決着するはずもない。一騎打ちは太陽が頂点から、西へと傾いたときにも、まだ、終わりの様相を見せなかった。一見して、剣技に優れるのはファリアだった。ただ、ファリアの攻撃が当たっているように見えるが、すぐにメルギスは起き上がるのだった、何事も無かったかのように。

「聖王よ、なかなかやるようだな」
「私の剣をそこまで受けて倒れないとは、これも魔剣の力と言うわけか」
「魔剣の力ではない、俺の力だ。魔剣を使役しているのは俺だからな。遊びは終わりだ、そろそろ、終わりにしようか!」

メルギスが魔剣に手を掛けるとそこに魔力を集中させていく。

「神技…「魔剣解放」! 砕け散れ、聖王!」
「その魔力の消費、1度外せば、もう当分は使えまい。そんな大振りをかわせないとでも!」
「ランスロット、来い!」

メルギスが声を掛けると、迅速の勢いで、メルギスの陣から1人の騎士が登場する。炎と狂気を纏ったその騎士の名前は円卓の騎士ランスロット。

「しまった。聖王!」

パーシヴァルが助けに入る間も無く、ランスロットの剣から放たれる炎がファリアの回りを取り囲む、そして、退路を断たれたファリアの元に、メルギスの神技が放たれる。魔剣レーヴァテインがメルギスを閃光のように動かし、その一撃に重い怨嗟の念が力となって注ぎ込まれる。それは爆炎となり、熱と光が周辺の視界をすべて遮断した。

沸き立つ炎王の軍と、見守る聖王の軍。勝負はついたかに見えた、そんな中、浮かない顔をしている者が居た。それはファリアを倒したはずのメルギスだった。

「メルギス、やっただろう。どうしたその顔は」

ランスロットがメルギスへと問う。狂気に支配された彼は主君への礼儀という心は無い。

「いや、手応えが無かった。幾度となく敵を倒してきたが、感触が無かった。まるで、風を薙いだような」
「どういうことだ」

爆炎が収まると、その中心には無傷の聖王が居た。そして、その回りには風が舞っていた、まるで、あたりを癒すような風が。そして、聖王の隣には、1人の不思議な少女が立っていた。

「あれは、何者だ。まあいい、今回は退くぞ、神技が無くして奴は殺せん」
「ふん、俺は騎士が殺せるなら何でもいい、次はもっと戦わせろよ」
「分かったよ」

メルギスが退くと、炎王の軍は速やかに撤退していった。

「そこの君、助けられたな、すまない」
「あなた、大きくなったわね。やっぱり、立派な王になった」

ファリアは少女の顔を見てハッとする、かつての記憶を思い出す。

「まさかとは思っていたが、君はあのときの」
「あいつを追って来たら、昔にふらっと寄った、この世界に来るなんてね、これも何かの縁かしら」
「しかし、君は変わらないな、そうだ、あの時の質問に答えてくれるか? 私はファリア、このグロリアの王だ。君は一体……」

10年越しの問いに不思議な少女は答える。

「私の名前はアリス。よろしくね」

第2章へ続く。

2015年9月19日 土曜日

物語"七世界の王"

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