「七世界の王」第5章 影の少女

アリス、ファリア、プリシアの3人はブレイザーとの戦いの最中にいた。

『もう、しつこいんだから!』

『アリス、私が注意を引きつける。奴の攻撃は驚異だが直線的だ。私が仕掛ける、そうしたら、アリスは左、プリシアは右に回ってくれ。合図したら一斉に攻撃しよう』

『わかったわ』

『りょーかいだよ!』

ファリアはブレイザーの前へと踊り出ると、その攻撃を誘う。

ブレイザーは誰の目から見ても明らかに正気を失っていた。そして、ファリアは、それを何者かによる傀儡の術の類に違いないと考えていた。ならば、単純な策の方が効果的だろう。ファリアは戦いながらも、冷静にそう分析していた。

『ファリアーーー! 大丈夫ーーー!?』

『ふふ、心配はいらない。当たらなけれれば、死にはしないさ』

プリシアは心配そうに声を掛けるが、ファリアはブレイザーの攻撃を紙一重でかわしていた。プリシアが危ないように見えるのも無理はないだろう。ファリアは敢えて危ないように振る舞い、ブレイザーが大きなアクションを繰り出すのを待っていたからだ。その誘いに乗るようにブレイザーは動く。その全身の力と魔力を集中して、ファリアへと迫っていた。

『今だ、アリス、プリシア!』

そのブレイザーに向かって、アリスとプリシアが動く。アリスはレガリアの力を借りて騎士の姿となり、プリシアは四聖の獣達と共にブレイザーへと襲い掛かる。そして、ブレイザーの攻撃が、ファリアへと届くまさにその寸前。アリスとプリシアの攻撃が、ブレイザーを強烈に弾き飛ばした。

『ファリア。今のはちょっと危なかったんじゃないの?』

『あのままいけばだがな、大丈夫だよ。信頼しているからな』

『やめてよ、こっちの方がヒヤリとするじゃない』

『それよりも奴だ。まだ、生きているかもしれないぞ』

『私だけならともかく、プリシアの攻撃も受けて? 当分は動け‥‥』

アリスがブレイザーを弾き飛ばした方向を見る、しかし、その土煙の後に‥‥ブレイザーの姿は無い。

『アリス、後ろだ!』

ブレイザーは始祖の王によって、執念を極限まで強化されていた。代わりに痛みを知る理性と、余計な感情を放棄することで。そして、その執念の刃がその崩れかけた体と命を燃やし尽くしながらアリスへと迫っていた。その刃はアリスの元へ、届く‥‥かに思えた。

しかし、そのブレイザーの攻撃がアリスへと届くことは無かった。代わりに、空から降り注ぐ、幾重にも折り重なった影の槍が、ブレイザーを串刺しにしていた。

そして、黒衣の少女が現れた。

『そんな奴に苦戦してんじゃないよ、それでも「私」なの?』

アリスが空を見上げると、いつのまにか空は黒く燻んでいた。そこから吐き出される闇はその場にいるもの達の力を奪っていくようだった。事実、黒衣の少女から放たれた影の槍はブレイザーを串刺しにし、その命の火を完全に消していた。

『さあ、お食べなさい。シュレディンガー』
『みゃあ~』

シュレディンガーと呼ばれた黒猫が、ブレイザーへと近づく。しかし、シュレディンガーはブレイザーに近づくと、すぐに興味を失ったように少女の元へと戻っていき、また、「みゃあ」と鳴いた。

『あら、もう、これ「抜け殻」じゃない。誰かにお仕置きを受けた後かしら。何も「残ってない」わ。仕方ないわね、あなたたち、私のかわいいシュレディンガーの餌になってくれない?』

黒衣の少女がアリスと七王の元へとその眼光を向け、最初で最後の挨拶をした。

『私はそう、ダークアリスとでも名乗っておこうかしら。皆さん。ごきげんよう、そして、さようなら』

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そこからの戦いは一方的だった。

黒衣の少女、ダークアリスを名乗る少女は周到に罠を張り巡らせていた。ダークアリスの影の結界はレガリアの力を封じ、七王が真の力を解き放つことを阻害していた。そして、アリスと七王もその力を発揮できないまま、ダークアリスが操る、影の軍団に追い詰められていった。

『アリス、心配いらないわ。あなたの望みは私が叶えてあげる』

『あなたも地球の生き残りなの? なら、一体、何のために?』

『あなたの代わりに「あいつ」を殺してあげるって言っているのよ』 

『まさか、あなたは私の‥‥』

『覚えていないの? おめでたいわね、地球が滅びるさまをあなたも見たでしょうに。もういいわ、死んで私の糧となりなさい』

黒猫のシュレディンガーがみゃあと鳴くと、影の兵隊が吐き出される。シュレディンガーは影を吐き出すたびに小さくなり、そして、何かを吸収するたびに大きくなる。すでにメルギスとレザードは倒れ、あの黒猫に吸収されていた。

『私のシュレディンガーから何が出るかはお楽しみ。でもね、いいものが食べれてないみたい‥‥なんて、かわいそうなの』

ファリアがその黒猫を見て、考えを巡らせる。

『あれが奴のレガリア‥‥しかし、本当に厄介なのはレガリアと影の兵隊ではなく、この我々の力を削ぐ影の結界だ。これほどの結界は事前に多くの準備が必要だろう。となると、この場所が奴に知られていたということになる。つまり‥‥』

1人だけこの戦いにおいて、余裕の表情を浮かべる王がいた。さも、想定の範囲内という表情の王、それは‥‥。

『ヴァランティーヌ。貴様の仕業か』

『さて、何のこと? 戦いに集中しないでいいのかしら?』

『しらじらしい。この会談を潰してどうする? この世界が無くなれば、困るのはお前も同じだろう』

『そうね、だから、守らないといけないわね』

ファリアは戦いながら、結界からの脱出法を探していた、空にいるアーラ、そして、マキナ、プリシアも同様だった。アリスは自分の影とも言える存在の登場に呆然と立ち尽くしていた。

『アーラにマキナ、それに、プリシア。この結界の中では、勝ち目はない。私が奴を食い止める。脱出して再起を図ってくれ』

ファリアが残った七王に声を掛ける。

『君だけで奴を食い止めるのは無理だろう。私も手伝おう。君にはアルマラを浮上させたときの恩があるからな』

『ファリア、私はまだ戦えるよ。四聖のみんなもいるし! それにみんなで戦った方が、脱出できる可能性も高くなるはず!』

アーラーとプリシアは即座に共闘を申し出る。

『マスター。私は体が思うように動きません。私を置いて脱出を‥‥』

『そうか、マリーベル。奴の狙いは我々だ。戦いが終わるまで、そこでじっとしていろ。これは命令だ』

マキナも少し遅れて、ファリアの元へと現れる。

『私はマリーベルを置いてはいけん。貴様の手助けは癪だがな』

『そうか、ふふ、まさか、こういった形で共闘することになろうとは、わからないものだ』

そして、アリスは‥‥。

『ファリア、私も戦わなきゃ‥‥奴を止めなきゃいけないのは、私だと思うから』

『いや、良く聞いてくれアリス、君は君にしかできないことがある。この世界を君の言う「あいつ」から救うことだ。だけど、それは今、君が死んでしまえば、終わりだ。それに、君は約束しただろう? 妹に不思議な話をしてくれるって。ふふ、だから、私も君には生きて貰わないと困るんだよ』

『でも、あなたは!』

『エクスカリバーよ、湖の記憶よ。私の最後の力を託す。アリスをあの湖まで、運んでくれ。アリス、妹のことは頼んだよ』

『ファリア! 待っ‥‥』

エクスカリバーが輝きだすと、アリスは光に包まれた。そして、闇の空を一筋の光が遠くへと突き抜けていった。

『あら、残念、逃しちゃったか。まあいいわ、さて、昼どきって時間でもないし、食事も終わりにしないと』
『そう簡単にいかないさ。こちらも、守らねばならない世界と、そして、王としての誇りがあるからな。では、いくぞ!』

ファリアはダークアリスとの戦いへと向かった。彼女が最後に思ったことは、国のことでも、世界のことでもなかった。

『お兄様、私は王としての努めを果たせていたでしょうか‥‥』

そして、1つの戦いは終焉を迎えた。

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戦いが終わったとき、ヴァランティーヌは一人、丘の頂きに立っていた。

『ファリア、安心なさい、あなたが守りたいと言った世界、確かに私も無くなったら困るものよ。でも、大丈夫。だって、これからはそう‥‥』

『私が世界よ』


2015年12月21日 月曜日


物語"七世界の王"

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