第3章「天空の紅き少女の章」

第5弾 天空の紅き少女の章

その少女は、空を見下ろしていた。

崖下には雲の海が尽きることなく連なり、遥か地上の様子は見られない。
この天空に浮かぶ城は魔力によって浮上し、その存在を隠すために周りは常に雲によって覆われていた。
ゆえに、地上の世界は見られないのだが、思いを馳せるようにその少女は雲の海の下にある地上を見ていた。

この城に住むエルフの子供がトコトコと近づくと、少女に尋ねる。

『ねえねえ、おねえちゃんは何でいつもここにいるの?』

『それはね、自分の居場所を思い出すため……かな』

えー、わかんないーと子供がむくれると、少女は優しく微笑み、忘れてはいけないこともあるから、と自分に言い聞かせるように言った。

この城は、地上と月の間の不思議な空間に存在しており、時間の流れは緩やかに進む。
六賢者と呼ばれた魔導師の1人、フィースシングの魔力と魂を宿した真魔石によって、空間と時間の流れを外界と途絶しているからだ。
この城が浮上したのは、遥か千年の昔に行われた戦いの最中だが、この城に住んでいるものにとっては、これまでの時間は百年にも満たない。

そして、ここには古代人と呼ばれる人々や、エルフ達が暮らしていた。
その中には、かつて不死の姫と六賢者と共に「支配者」達と戦ったものもいる、その少女もその内の1人だった。

月へと帰る前にかぐやは言っていた。

『黒の預言者と紅き魔物によって、「支配者」達の封印は解かれようとしています。
この城は魔力によって守られていますが、古の塔が起動すれば、フィースシングの防壁も無力化されるでしょう。
あの紅き魔物はこの城を目指してきます。私は戦いの準備のために月へと一旦帰ります。私が戻ってくるまで、何とか持ちこたえてください』

それを聞いたとき、その話の深刻さとは逆に少女うれしそうに笑った。
そう、忘れてはいけないこと、それは、あの時「あいつ」に奪われた名前を取り戻さなくてはならないということだ。
やっと、この時が来たの、少女は心の中でそう思った。

「あいつ」が何者なのか、それはいまだに分からない。
しかし、奴は自身の存在自体に「嘘」を付くことで、私の世界を乗っ取ってしまった。
だから、「あいつ」を倒さない限り、私の世界は戻ってこないだろう。そう、そのためには……

『ねえねえ、おねえちゃん。何でそんな難しい顔してるの?』
『えっ、あれ、おかしいな。そんな顔をしてた?』
『うん、むー、むー、って顔してた。』
『それはね、昔のことをちょっと思い出していたから。昔ね、私には毎日帰るべき家と、帰るべき物語があったの』

そうなんだーと子供の声が聞こえる。

それは子供には理解はできなかったが、少女の真実だった。
これは、どれだけ昔のことでも、絶対に忘れない。そして、彼女は「嘘」は決してつかない。
それが、「あいつ」に対抗しうる、何かに繋がるかもしれないと思ったからだ。

いつの間にか外界と途絶され、風の吹くはずがないこの城に風が吹き始めていた。
崖下には薄くなり初めた、雲の海からは、地上が透けて見える。
少女は赤いずきんを被ると、もう、地上を見ては居なかった。

『さあ、ここは危ないから、そろそろ帰りなさい』

少女は子供に話しかける。

『うん、分かった!』
『寄り道はだめだよ』
『はーい!』

子供はまた、トコトコと来た道を引き返していく、かつて、少女は寄り道をする側だった。しかし、今は、真っ直ぐと進むべき道を見つめていた。

2014年12月15日 月曜日

物語”天空城と二つの塔”

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