第5章「不思議の国のアリスの章」

アリスは地上へと落ちる天空の城を見ていた。

 

赤ずきんとアカヅキンの戦いは天空城の魔力は無尽蔵に消費し、アルハザードによって、浮遊の力が無力化されると、天空の城は重力に引かれ、地上へと落ちていった。その様子はこの地上に居る人々から見れば、まるで世界の終わりを思わせるようだった。

ア リスはグリムの力に惹かれてこの世界に訪れた、異界からの来訪者である。しかし、アリスが辿り着いたときには、もう、グリムは力を失い。魔本へとその存在 を封印されるところだった。アリスはグリムによって、その意志を託されると、それをルミアへと届け、それによって、ルミアは覚醒し、世界を再生させる力を 得た。

アリスは「観測者」と呼ばれ異界の者であるが故に、この世界ではまだ十分に力を発揮できない。魔術の基本構造は共通の部分が多いが、その源となる魔石の使い方や性質は世界によって、違いがある。この世界で、アリスが発揮できる力は、本来の半分にも満たない。

アリスは地上へと落ちる天空の城を見ていた。

そ のため、アリスはこの世界ではあくまで傍観者の役割に徹していた。グリムの助けとはなったが、物語の主要人物としては動いてはいない。しかし、この世界の 行く末はアリスの命運も分ける重大な分岐点となっていた。アリス自身の世界を「奴」から「救う」には彼らの助けが必要になってくるのは間違いないからだ。

「始まるのね」

落ちる城を見て、アリスはそう、つぶやいた。終わりではなく、始まり。

ルミアはパンドラを救出し、さらに、絶望の塔で「支配者」の信奉者の末裔であるアルハザードもその創生の力によって打ち倒した。しかし、その代償として、ルミアもその力と心をアルハザードの「ネクロノミコン」によって封じられていた。

「私は帰れないかもしれない。だから、この最後の私達の希望をパンドラに託してある。だから、アリス、よろしくね!」

ルミアが残してくれた希望。それは、新しいパンドラの匣。これが、何をもたらすのか、今はアリスにも分からなかった。

そ して、3日三晩続いた、赤ずきんとアカヅキンの戦いは赤ずきんが聖風石『フィースシング』に全ての力を込め最後の一撃を放ったことで、共に天空の城から地 上へと落下していった。しかし、アルハザードが最後に解き放った魔封石の力と、アカヅキンの魔力が呼応すると、アカヅキンの落下したその場所に黒点のワー ムホール、「黒い月」が出現する。

その中から、生まれるのは千年の時を越えて復活した「支配者」だった。
「ここまでは、予定通りなのかしら、ねぇ、かぐや」

アリスは空を見上げると、いつの間にか、赤い月は蒼い月へと変わっていた。そして、遠くに見えるのは、古の世界に伝えられる物語の軍勢。

「さて、私もやれることをやらなくちゃ」

蒼き月の下、アリスは幻想の力を使い、何処かへと向かっていったのだった。



2015年2月15日 日曜日

物語”天空城と二つの塔”