“月下の覚醒者” 第3章 再会

これも一つの再会と呼ぶのだろうか。彼女達はかつて一つだった。それが、光と影に別れ、同じ目的の為にこの地に集い、異なる信念によって衝突した。その戦いは対消滅しすべてを失うかのように見えた。しかし、その意思を汲みとった世界樹ユグドラシルが二人を光に包み、吸収したのだった。そして……

一方その頃、次元の狭間から、宇宙船のようなものがこの世界に降り立っていた。そこから飛び出して来たのは、一人の小さな魔法使い。

「うーん、やっと着いた?」

この世界では誰も知らない物語の主人公。そして、今は次元を渡る観測者にして、とある次元を救った英雄。その名前はかぐや姫。

「ふっふっふ、この星の者達よ征服してやるぞ……って、違った! ついつい……さて、アリスに渡してある魔石の感覚は……あっちだね!」

この世界の誰もがかぐやを知らないように、かぐやもこの世界については何も知らなかった。しかし、彼女がそれを気にすることは無い。

かつて不死の呪いによって無限に死なない時間を持った彼女が、クトゥルフとの戦いでそれを失い、有限の生きる時間を得たことで、彼女は世界を知るという楽しさを実感していた。そう、新しい世界での新しい出来事は彼女にとって宝石だった。

「むむ……この世界、何も分からないけど……ワクワクするね! アリス待っていて、今、正義の味方が助けに行くから!」

かぐやはそう言うと大きな大きな世界樹へとかけ出した。

世界樹ユグドラシルはラピスの次元の吸収を察知していたのかもしれない。この世界を守るために世界樹は依り代を探していたのだ。そして、アリスとダークアリスが戦い、その意思が世界樹に流れ込んだとき、世界樹もまた、その意思に反応した。そう、ラピスを倒し、この次元を守るという意思に。

「ここら辺から、感じるのだけれど」

かぐやは世界樹の回りをうろうろと飛び回る。世界樹は不思議な光こそ放っているものの、アリスの姿を見られない。

「むむ、間違ったかな?」

そう言いながらも、かぐやは自分の直感に絶対の自信を持っていた。フィースシング譲りの直感。

「いや、アリスは居る。間違いない……だけど、同時に嫌な気配も、って、やっ!」

かぐやはその場所から後ろへと素早く飛び去り、空を見上げた。そして、かぐやの居た場所はコンマ数秒の後、燃え盛る炎によって包まれる。見上げた空の先にに居たのは、シルヴィア・ギル・パラリリアス。

「ちょろちょろと虫が居ると思えば。飛び回る少女よ、どこから来た。この世界のものではないな?」

「あなた……悪者ね。ならば、答える必要はないわ!」

「もうすぐ世界は終わる。だが、イレギュラーなものが参加されては困るな」

「私が来た以上、この世界の物語の主人公は私、無視はさせないわ!」

「物語? なるほど、お前も地球から?」

「へへん、いい推理ね。だけど、それも答える必要は……ない!」

かぐやの杖から放たれる光の魔法がシルヴィアを襲う。シルヴィアはそれを剣で振り払うと、振り放った剣からさらに炎を放ち、それはそのまま、かぐやへと襲いかかる。だが、かぐやはその炎を光で包むと燃えるという概念そのものを消滅させた。

「なるほど、無効化の力か、少々厄介だな」

「あなたの炎なんて、私にとっては風みたいなもの。あなた、ツキが無かったね!」

いつの間にか、かぐやの背後の空には月が輝いていた。この世界のものではない。彼女の記憶から引き出された仮初の……しかし、実体を伴った地球の月が。

「この懐かしい光は……」

そして、その月の光を受けて、アリスもまた、目覚め始める。決戦の時はすぐそこに迫っていた。

月下の覚醒者 第4章へ続く

2016年5月25日 水曜日

物語"月下の覚醒者"