“光と影のアリス” 第5章 光と影の邂逅

『今は引きなさい、ラピスの眷属。それともここで戦いを続けるつもり?』

アリスがシルヴィアへ向かって話す。

『いや、2対1では少々骨が折れる。ここでの勝負は預けておこう。また会うことになるだろうからな』

シルヴィアは人型へと戻ると、そう言い残して去っていった。この世界樹の見える場所で残されたのはアリスとダークアリス、ただ2人。

『‥‥ふざけないで。助けてくれなんて言った覚えはないわ』

『私も助けたつもりはない。あなたとの決着を邪魔をされたくなかっただけ』

『決着?笑わせてくれる。あなたに何ができるっていうの?』

『私はこの世界を守りたい。だから、あなたを止めに来たの。あなたは世界を、すべてを壊そうとしている。それに、その闇の力ではラピスは倒せない』

『戯言を。そんな理想を吐いて誰が助かるのよ。力が足りないというのなら、あなたを殺してやる。そして、私がさらに大きな力を得ればいい。そうでしょう』

『力の強さだけを求めても、待っているのが破滅だけってことが、分からないの?』


『何度も言わせるな! だから、私があなたもあいつも殺してあげるって言っているのよ、シュレディンガー。例の奴行くよ、召喚モード!』

『みゃおー』

シュレディンガーから、今までよりもはるかに多い瘴気が放出される、その瘴気から形作られたのは、今までの影の兵隊ではなく、頂上会談の際に吸収された七王達の影だった。ファリア、メルギス、レザード、アーラ、そして、マキナの影がそこにあった。

『これは、とっておきだったけど、もういいわ。絶対に殺すから。行くよ、神技「ワルプルギスの夜」!』

ルーラーが持つ固有のスキルは空間さえも支配する。ダークアリスの結界は太陽すらも遮断する結界。薄暗い結界の中は息苦しく、そこに蠢く影達は生あるものすべてに嫉妬していた。

『見なさい、あなたの好きなファリアも今は私の影でしかない。私もお気に入りよ、だって、強いものね。さあ、愛しのアリスを喰らってしまいなさい!』

ダークアリスが七王達の影と共にアリスに攻撃を仕掛ける。多角的な攻撃がアリスの防御を、そして、影と化したファリアの姿が、アリスの心を揺さぶっていた。

『アリス。惑わされないで』

湖の妖精、ヴィヴィアンがアリスに語り掛ける。

『分かってる。大丈夫、ちょっと面食らっちゃっただけ』

『エクスカリバーの声に耳を傾けなさい。ファリアの意志が聞こえてくるはずよ』


アリスが心を澄ますと、エクスカリバーから、ファリアの意志が聞こえてくるようだった。私の魂はここにある。だから、迷わずに行けと。

『そうね、私には迷っている暇なんてない。もう1人の私、分かっているはずよ、その力は何かを救える力じゃない。私は私の世界を取り戻すために戦う、神技「追憶の理想郷」!』

ダークアリスの結界がアリスの作り出した結界によって相殺される。アリスの妖精達は自由を取り戻し、逆にダークアリスの影はその能力を鈍化させた。

『その力は‥‥あの時、一思いに殺されていれば良かったものを、簡単には死ねないわよ』

『そうよ、簡単には死なない。そして、あなたも救って見せる』

『私を救う? ふざけたこと言わないで、誰から? 何のために?』

『私は思い出したの。地球がラピスに吸収されたときの無念と悔しさを、そして、あなたは私の憎しみ、ラピスを殺したいという心から生まれた私の弱さ。でも、それでは、ラピスは倒せない。この世界の意志、そのすべてを味方にして戦わなければ、あいつは倒せないから』

『くだらない。弱さから生まれたのはあなたの方よ! あなたが、私の分身、残された良心ならば、喰らって、次元の底にでも捨ててやるわ。そうすれば、もう、迷う必要もない。シュレディンガー、これで最後よ、殺戮モード!』

『みゃ〜』

シュレディンガーは少し困ったように鳴くと、ダークアリスへと最後の力を授けた。アリスもエクスカリバーを構え、そして、一瞬の静寂の後、最後の交錯が行われた。

2人の存在の衝突。光の闇の邂逅。それが行われた後、ダークアリスはすべての力を使い果たし、世界樹の元に倒れていた、そして、アリスもまた。世界樹からキラキラとした雫がアリスとダークアリスに降り注いでいた。

それは光の繭となり、2人はそのまま世界樹へと吸い込まれていく。

『これで、どうなるのかな?』『まだ、どうにもならないわよ』『そっか』『そうよ』

遠くでは少年と少女がこの戦いをただただ見守っていたのだった。

“月下の覚醒者” 第1章へ続く



2016年3月9日 水曜日

物語"光と影のアリス"